「何の展覧会だったか忘れたが、東京国立博物館で広重の京名所之内淀川(三十石船)に非常な感銘を受けたのが私と浮世絵の出会いである。」(「私と浮世絵」より) |
「私は小学生の頃に宍道湖で上手に舟の艪をこいでいた。宍道湖には海とちがった水の流れ、安心感がある。小さい頃から近くに水があった。その水の感じがこの広重の淀川と同じ。これは本当によく描けている。」(「インタビュー」より) |
歌川広重
うたがわひろしげ
京都名所之内 淀川
きょうとめいしょのうち よどがわ
天保五年(1834)頃、大判錦絵、[新庄コレクション]
Utagawa Hiroshige
The series Famous Places in Kyōto (Kyōto Meisho-no-uchi) : Yodo River
[Shinjō Jirō collection]
淀川は京阪を結ぶ重要な河川で、中央にこの川を往き来した乗合船の「三十石船」を大きく描いています。その脇には、「酒くらわんか~」などと声をかけて飲食物を売った「くらわんか船」が添えられています。これらの基本設定は『都名所図会』の挿絵から借用していますが、船頭がふと見上げた先に月とホトトギスを配すあたり、広重らしい情趣が加えられています。
読み方:三十石船=さんじゅっこくぶね/都名所図会=みやこめいしょずえ