「私の蒐集に最も幸運だった事は肉筆浮世絵蒐集家として世界的に有名だった郷土の大先輩桑原羊次郎先生の知遇を得た事である。広重の東海道五十三次の大部分も先生の旧蔵品で多少の虫穴はあるが殆どが初摺の上色彩の鮮やかさでは何処の展覧会でも注目の的となった。」(「私と浮世絵」より) |
歌川広重
うたがわひろしげ
東海道五拾三次之内 池鯉鮒 首夏馬市
とうかいどうごじゅうさんつぎのうち ちりゅう しゅかうまいち
天保五~七年(1834~36)頃、大判錦絵、[新庄コレクション]
Utagawa Hiroshige
The series Fifty-three stations of the Tōkaidō highway (Tōkaidō gojū-san tsugi no uchi) : Chiryū, horse fair in early summer
[Shinjō Jirō collection]
副題に「首夏馬市」とあるように、毎年初夏に行われていた馬市を描いています。草原には多くの馬が杭に繋がれ、画面中央の談合松の下では馬喰と馬飼たちが値段を決めています。草原の色彩が実に美しく、薄い黄緑から藍を帯びた深い緑への繊細な拭きぼかしにより、吹きぬける初夏の爽やかな風をも感じさせます。遠景の黒い丘は、その形状から俗に「くじら」などと呼ばれ、本図のごく初期の摺でのみ見られます。