「戦後、電気スタンドの商売が軌道にのり、全国の百貨店を相手に営業する際、毎週のように東京にでかけては神田の古書店に寄り、浮世絵を探した。駿河台は明治大学在学の頃に親しんだ場所でもあり、懐かしかった。《東海道五拾三次》もどこでも2~3枚は置いていたから、お金さえあれば良いものが買えた。(中略)この頃は、かなり良いものでも数千円で手に入ったので、自分にとってはこの時代も環境も非常に幸せだった。」(「インタビュー」より) |
「庄野、亀山、土山、水口、石部、大津、京師は桑原コレクションに無く他から求めたもの。」(「図録メモ」より) |
歌川広重
うたがわひろしげ
東海道五拾三次之内 亀山 雪晴
とうかいどうごじゅうさんつぎのうち かめやま ゆきばれ
天保五~七年(1834~36)頃、大判錦絵、[新庄コレクション]
Utagawa Hiroshige
The series Fifty-three stations of the Tōkaidō highway (Tōkaidō gojū-san tsugi no uchi):Kameyama, clear winter morning
[Shinjō Jirō collection]
滑り落ちそうなほどに急な坂道を、大名行列の一行がのぼっています。この右上への坂道を画面のほぼ対角線上に描き、左上に副題にある通りの「雪晴」の空を大きく展開させています。藍の天ぼかしから、紙の地を活かした中空の白、山際にひろがるわずかな朝焼けの朱への色彩の変化が美しく、清々しい早朝の冬空をとらえています。