「之を入手して喜びの余り楢崎[宗重]先生宅を訪ねたら御渡欧中で、東博菊地[貞夫]先生にお見せしたら3ヶ月前に北斎の新書を出された直後で大変残念がられた。之は新発見、しかも国芳の袋付には感に堪えませんとの事。すごろくと題されているがさいの目の変化もなく鎌倉、江ノ島、大山の風光を小画の中に実によく描かれた道中画である。其の後、京都の美術館で一点見たが国芳の袋はなかった。」(「図録メモ」より) |
葛飾北斎
かつしかほくさい
鎌倉 江ノ嶋 大山 新板往来双六
かまくら えのしま おおやま しんぱんおうらいすごろく
天保三~四年(1832~33)頃[初版は天保二年]、大々判錦絵、[新庄コレクション]
Katsushika Hokusai
Newly published board game of a journey to Kamakura, Enoshima, and Ōyama
[Shinjō Jirō collection]
北斎が描いた唯一の道中双六の作例です。道中双六とは宿場や名所を各マスとし、地名やその土地の名物などを遊びながら覚えることができました。本作品では右下の日本橋をふり出しに、鎌倉、江ノ島、大山などの名所をめぐってまた日本橋に戻る、という実際に江戸庶民が旅した定番コースが題材となっています。