「昭和53年英国オックスフォード大学から出版された浮世絵の研究書[リチャード・レイン著『Images from the Floating World』(Oxford University Press)]には世界の名品が集まっているが、[《冨嶽三十六景》の]凱風快晴、山下白雨、木曾海道の洗馬、宮ノ越の4点が記名入で載せられた。」(「私と浮世絵」より) |
歌川広重
うたがわひろしげ
木曾海道六拾九次之内 宮ノ越
きそかいどうろくじゅうきゅうつぎのうち みやのこし
天保七~八年(1836~37)頃、大判錦絵、[新庄コレクション]
Utagawa Hiroshige
The series Sixty-nine stations of the Kisokaidō highway (Kisokaidō rokujū-kyū tsugi no uchi) : Miyanokoshi
[Shinjō Jirō collection]
中山道を題材としたシリーズ《木曾海道六拾九次之内》の中で「長久保」・「洗馬」と共に“三役”に挙げられる人気作です。満月に照らされ、眠る幼子を抱えた父母とそれに従う娘の姿が浮かび上がります。手前の家族や橋は輪郭線で明瞭に描かれるのに対し、背景の木々や岸辺は墨の濃淡だけで表現されています。まるでパステル画のようなやわらかな色調が、夜霧に包まれた幻想的な風景を生んでいます。