「この[川瀬巴水の]美保関図は多分福間別館より描いたものと思う。昭和30年代までは美保関もかなり賑わっていて私も度々お参りした。いつか定宿の美保館が満員で福間別館に案内され、泊まった2階の部屋に赤と緑のコントラストのすばらしい津田赤蕪の額に驚いたら織田さんのサインに尚関心。織田一磨氏の出雲美保の関の景もこの福間別館二階が描かれている。多分大正13年作と記憶しているから、巴水と同年と思う(※)。巴水氏と一磨氏がこの福間別館で同宿されたら面白いお話しが出来ただろうにと思ってもみた。」(「手紙」より)(※この作品の制作年は大正13年ですが巴水が来県したのは前年の大正12年) |
川瀬巴水
かわせはすい
旅みやげ第三集 出雲 美保ヶ関
たびみやげだいさんしゅう いずも みほがせき
大正十三年(1924)、木版色摺、[新庄コレクション]
Kawase Hasui
The Account of the Travel Vol.3 Miho-no-seki in Izumo Province
[Shinjō Jirō collection]
海沿いの美保神社の門前町は、いつもと同じように朝を迎えています。東からの陽射しを受け、湾に打ち寄せるさざ波は、複雑にその色の表情を変えています。この美しい朝の海辺の風景は福間別館から眺めたものと考えられています。客室からふと見かけたのでしょうか、常夜灯そばの親子を描く画家のまなざしは、地元の生活感から一定の距離を置いて眺める旅人のそれであり、どこかしみじみとした旅情を感じさせる作品です。
織田一磨
おだかずま
出雲みほのせきの景
いずもみほのせきのけい
大正十三年(1924)、木版色摺、[新庄コレクション]
Oda Kazuma
View of Mihono-Seki in Izumo Province
[Shinjō Jirō collection]