北斎コレクションの形成
当館の北斎コレクションは、
前身の島根県立博物館の時代から
30年以上かけて形成されたもので、
大きく3つの段階を経ています。
松江市出身の新庄二郎氏(1901-1996)が蒐集した浮世絵のコレクションで、その内容は、北斎、歌川広重、小林清親らの風景版画を中心に、美人画、花鳥画、長崎版画など多岐にわたります。1983年、島根県が同コレクション378件を購入し、これに複数回の寄贈作品を加えると、その総数は471件に上ります。その内の約60件が北斎に関する作品です。
新庄氏は蒐集にあたって数よりも質や内容を重視したため、摺りや保存状態が良好な作品が多く含まれています。北斎の作品では、《冨嶽三十六景 凱風快晴》が大阪万国博覧会の「万国博美術展」(1970年)に浮世絵の代表作として世界の名画と共に展示された逸品です。他にも《冨嶽三十六景》の諸図[図1]、全8図が揃った《新板近江八景》[図2]、北斎が唯一手がけた道中双六《鎌倉 江ノ嶋 大山 新板往来双六》[図3]などはいずれも摺りや保存状態が良好な作品です。
松江市出身の新庄二郎氏(1901-1996)が蒐集した浮世絵のコレクションで、その内容は、北斎、歌川広重、小林清親らの風景版画を中心に、美人画、花鳥画、長崎版画など多岐にわたります。1983年、島根県が同コレクション378件を購入し、これに複数回の寄贈作品を加えると、その総数は471件に上ります。その内の約60件が北斎に関する作品です。
新庄氏は蒐集にあたって数よりも質や内容を重視したため、摺りや保存状態が良好な作品が多く含まれています。北斎の作品では、《冨嶽三十六景 凱風快晴》が大阪万国博覧会の「万国博美術展」(1970年)に浮世絵の代表作として世界の名画と共に展示された逸品です。他にも《冨嶽三十六景》の諸図[図1]、全8図が揃った《新板近江八景》[図2]、北斎が唯一手がけた道中双六《鎌倉 江ノ嶋 大山 新板往来双六》[図3]などはいずれも摺りや保存状態が良好な作品です。
島根県立博物館が所蔵していた新庄コレクションを受け継いだ当館は、日本の版画史を辿れる体系的なコレクションの形成を目指し、「日本の版画」を収集方針の一つに定めました。1999年の開館以前の準備室時代より、浮世絵の分野では、新庄コレクションの内容を補完、充実させるべく、北斎と広重の風景版画を中心に収集活動を行い、特に北斎を代表する風景版画シリーズ《冨嶽三十六景》[図4]、《諸国瀧廻り》[図5]、《諸国名橋奇覧》の収集に努めています。(※2022年までに約50件購入)
島根県立博物館が所蔵していた新庄コレクションを受け継いだ当館は、日本の版画史を辿れる体系的なコレクションの形成を目指し、「日本の版画」を収集方針の一つに定めました。1999年の開館以前の準備室時代より、浮世絵の分野では、新庄コレクションの内容を補完、充実させるべく、北斎と広重の風景版画を中心に収集活動を行い、特に北斎を代表する風景版画シリーズ《冨嶽三十六景》[図4]、《諸国瀧廻り》[図5]、《諸国名橋奇覧》の収集に努めています。(※2022年までに約50件購入)
津和野町出身の北斎研究者、永田生慈氏(1951-2018)が蒐集した北斎に関するコレクションで、2017年度に島根県へ寄贈されました。
北斎の青年期から晩年期までの各期の錦絵・摺物・版本・肉筆画があり、また役者絵・美人画・武者絵・花鳥画・風景画・仏画・玩具絵など、北斎が手がけたあらゆる画題の作品が収められています。そのコレクション中には保存状態が良い初摺の逸品も多く、北斎を代表する絵手本『北斎漫画』(初編)[図6]や『富嶽百景』の初摺本をはじめ、北斎の画業を代表する《冨嶽三十六景 山下白雨》[図7]も初期の希少な摺りです。
そして現存が世界で1点しか確認されていない貴重な作品・資料も少なくありません。例えば、《鍾馗図》[図8]は北斎画業初期の肉筆画で、「春朗」の署名を有する肉筆画としては現存唯一です。また北斎が亡くなった朝、娘の栄(葛飾応為)が門人に宛てた死亡通知書[図9]も、北斎の死の詳細を伝える現存唯一の貴重な資料として知られています。
こうした北斎の作品・資料に加え、蹄斎北馬、魚屋北溪といった門人たちの作品も幅広く収め、さらに版本の袋、板木、著名な北斎研究者の直筆原稿など、北斎に関する様々な資料も網羅し、その総数は2,398件を数えます。北斎の画業はもちろん、同時代や後世に与えた影響関係まで多角的に概観できる内容であり、北斎に特化した個人コレクションとしては世界屈指の規模を誇ります。
なお、本コレクションは永田氏の遺志により、島根県立美術館と島根県立石見美術館(益田市)でのみ公開が許可されています。
島根県津和野町出身の北斎研究者。元・太田記念美術館副館長兼学芸部長。1990年、津和野町に自身のコレクションを中心とした葛飾北斎美術館を開館(2015年閉館)。北斎に関する数多くの論文・主著・編著を執筆し、国内外で多くの北斎展の監修を務めた。2016年、フランスの芸術文化勲章オフィシエを受章。2017年、所蔵するコレクション2,398件を島根県へ寄贈。翌2018年2月6日逝去(享年66歳)。
津和野町出身の北斎研究者、永田生慈氏(1951-2018)が蒐集した北斎に関するコレクションで、2017年度に島根県へ寄贈されました。
北斎の青年期から晩年期までの各期の錦絵・摺物・版本・肉筆画があり、また役者絵・美人画・武者絵・花鳥画・風景画・仏画・玩具絵など、北斎が手がけたあらゆる画題の作品が収められています。そのコレクション中には保存状態が良い初摺の逸品も多く、北斎を代表する絵手本『北斎漫画』(初編)[図6]や『富嶽百景』の初摺本をはじめ、北斎の画業を代表する《冨嶽三十六景 山下白雨》[図7]も初期の希少な摺りです。
そして現存が世界で1点しか確認されていない貴重な作品・資料も少なくありません。例えば、《鍾馗図》[図8]は北斎画業初期の肉筆画で、「春朗」の署名を有する肉筆画としては現存唯一です。また北斎が亡くなった朝、娘の栄(葛飾応為)が門人に宛てた死亡通知書[図9]も、北斎の死の詳細を伝える現存唯一の貴重な資料として知られています。
こうした北斎の作品・資料に加え、蹄斎北馬、魚屋北溪といった門人たちの作品も幅広く収め、さらに版本の袋、板木、著名な北斎研究者の直筆原稿など、北斎に関する様々な資料も網羅し、その総数は2,398件を数えます。北斎の画業はもちろん、同時代や後世に与えた影響関係まで多角的に概観できる内容であり、北斎に特化した個人コレクションとしては世界屈指の規模を誇ります。
なお、本コレクションは永田氏の遺志により、島根県立美術館と島根県立石見美術館(益田市)でのみ公開が許可されています。
島根県津和野町出身の北斎研究者。元・太田記念美術館副館長兼学芸部長。1990年、津和野町に自身のコレクションを中心とした葛飾北斎美術館を開館(2015年閉館)。北斎に関する数多くの論文・主著・編著を執筆し、国内外で多くの北斎展の監修を務めた。2016年、フランスの芸術文化勲章オフィシエを受章。2017年、所蔵するコレクション2,398件を島根県へ寄贈。翌2018年2月6日逝去(享年66歳)。